ノーカントリー

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これまた、日本ではヒットしないわ…という感想。90年代だったらいざしらず、今の行き詰った世界情勢の疲労感に追い討ちをかけるような切ない作品だ。

映画の原題は「NO COUNTRY FOR OLD MEN」。ちゃんと書かないと意味が通じない。大金を持ち逃げするメキシコ人と、彼を追う謎の殺し屋。そして彼らに迫る引退間近の年老いた警官。根底にはベトナム戦争が横たわっている。

さすがコーエン兄弟、全編を通して気が利いている。殺し屋演じるハビエル・バルデムの怪演が愉快だ。と同時にプライベートな話のようでいて、全世界の終わりのような悲愴さだ。言葉もルールも通じない、そんな相手と戦うことができるだろうか?と、ぼんやりつぶやく老警官の嘆きが痛々しい。この殺し屋ひとりを捕まえれば済むという話でないのがわかっていて、彼は呆然とする。それでもメキシコ人の妻の最後の選択が、唯一救いだったように思う。

ノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

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