ジェイン・オースティン 秘められた恋

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うーん、悪くはないのだけど、すべてにおいて少しずつ惜しい感じがする。記憶に新しいナイトレイ版『プライドと偏見』がよかっただけに、乗っかるのではなくて、越えるぞという意気込みが欲しかった。

アン・ハサウェイは顔の印象が強すぎてちょっと苦手だが、引きでみると動きが素晴らしく、身体全体で演技をしているのがよくわかる。はつらつとした恋するジェインはよかったが、もう少し作家としての視線が欲しかった。一方のマカヴォイはファンなんだけれども、今回の演技はあまり新鮮味がなかった。『ペネロピ』と役どころが似ていて、見るならあっちの方が楽しい(笑)。

つまり、ドラマティックな『プライドと偏見』の方が作品としては純粋に面白い。作家を扱うのは結構難しいのでは、と思う。その点『カポーティ』は見事だった。

ひとつよかったのは、ジェインがアホ呼ばわりした近所の名士の甥っ子。アホなどではなく、シャイで誠実で紳士で頭もよく気概もある。が、ジェインにはなかなかそれがわからない。ひとつの恋の終わりを経て、ようやく人としてだけでなく作家としての眼を手に入れたのかもしれない。ジェインの描く物語は確かにドラマチックだけど、彼女自身の人生もまた、別の意味でやっぱり特別なものだと思う。