ノルウェイの森
http://www.norway-mori.com/index.html
原作は15年ほど前に読んだきり。この小説のテーマはざっくり言って”生(性)と死”だと思うのだけど、87年に刊行された60後半から70年代の物語でもあり、70年代というとこも外せないポイントだと思う。わたしにとっては出版された当時の熱狂はなんとなく想像できる程度で、また読んだ当時はまだ子どもだったこともあって、まったく興味が持てなかった。映画を見ながら理解できたことも多く、そうだ…こういう話だった…としみじみした。
ワタナベ自身については特に思うところはないのだけど…、高原の療養所で朝っぱらから歩き回るシーンが好きだ。部屋を出るとき、えっそんな薄着で大丈夫?と思ったら本当に寒そう。でも寒いとかもう帰ろうよーとかは絶対言わない。言うことといえば『もちろんだよ』(笑)。うまくやりたいけど、誠実でもありたい。でもそもそも誠実とは何なのか、それがよくわかってない。なんだかそんな青年のような感じがする。忍耐強さについてだけは素晴らしいと思うが、つかみどころがなくて、女性はイライラさせられそう。
愛する人を、そして自分自身を喪っていくこと。それに抗う、菊池凛子演じる直子の、生きることへの挑戦は見ごたえがあった。緑については、もう少し丁寧に描いてもよかったかも。最後のシーンになるまで、緑がワタナベのことを愛しているのがわたしにはわからなかった。それから直子と緑の役者の年齢のバランスはもう少し考えて欲しかったな。緑(水原希子の棒読み演技、結構好きだけど)が子どもっぽすぎる。
個人的に小説のなかで一番インパクトのあったレイコさんについては、ちょっとあんまりでは。。直子を喪ったレイコとワタナベが生きていく決意をする大切な場面で、なんでそうなるのか説明がないので小説を読んでいないと理解できないだろう。
実はすごくつまらないだろうと思っていたのだけど、個人的にはよかった。原作との立ち居地などで、見る人にとって様々な見え方のする映画だったように思う。その揺らぎがよい。今、わたし自身がすこし大人になったからすこしわかる気がする彼らの物語は、美しい映像の余韻に沈んで、『ノルウェイの森』という曲だけが最後に残った。そんな感じです。
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