甘い人生
かなり純度の高いノワール、バイオレンス、アクション作品だ。文字通り生きるか死ぬかの血みどろの戦いである。「甘い人生(原題「Bittersweet」)」とは、暗黒社会の身を置く主人公のほんのひとときの安らぎ、淡い想いを指しているが、この一瞬の心の隙が彼の命取りとなる。CMで流しているような純愛のような甘さは微塵もない。
軽い気持ちでボスの女の浮気を見逃したことが、彼の歯車を大きく狂わせ、生死をかけた復讐劇へと姿をかえる。そのきっかけとなった女性や、ボスとの(師弟のような)関係などに深みがなく、主人公がそれほどまにで痛めつけられることに、主人公同様こちらも理不尽さを感じてしまう。一瞬の心の揺らぎすら許されないのだとボスは言うのだが、ただの色ボケじじいのように見えなくもない。そもそもヒロイン演じるシン・ミナは幼く清楚すぎて、なぜヤクザの愛人をやっているのか理解できなかった。
イ・ビョンホンはこの作品が自分の代表作となると言っている。愛のためでも復讐のためでもなく、ただ矜持のために命をかけたともいえるこの物語は、イ・ビョンホンの存在を存分にアピールしている。戦うためだけに存在を許された主人公を、美しく演じている。ひたすら凄惨ではあるが、(このジャンルが苦手でなければ)観る価値はある。
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2005/11/02
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