ラスト、コーション 色|戒

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日本占領下の上海を舞台に、命を狙う者と狙われる者の禁断の愛を描いた物語。物語は非常にシンプルで、監督アン・リーの作品らしく大味で大胆、役者の存在感を生々しく引き出していていた。主演のタン・ウェイは垢抜けない雰囲気を残した美女で、無垢な頃とスパイになってギラギラしている時のギャップが素晴らしかった。彼女の演技がなければ成り立たない作品で、見事だった。

ラスト、コーション 色・戒 (集英社文庫)

ラスト、コーション 色・戒 (集英社文庫)

前半の不遇な時代のタン・ウェイが、私のなかで「白線流し」の酒井美紀とかぶってしまったのだが、後半、友人はほしのあきに見えて仕方がなかったと言っていた(笑)。彼女は素朴な雰囲気があって、役でも皆をひれ伏させるような特別な存在ではないのだけど、少女の頃から内に燃える炎があって、それが結果、どんなときも彼女をまったく幸せにしないのが痛々しかった。

女優に憧れていた少女が、最初にイーを陥落させたとき、「勝った」という表情で一瞬笑ったのがすごかった。ところで、この作品の柱、”色”の部分。お笑い番組で使われるようなボカシがポンポン出て、思わず笑ってしまった。もっと上手くできないものだろうか。。それで、アクロバットで手足がどうなっているのかもはやわからなかったのはすごかった。暗く先が見えないなかで、ふたりとももう生きるか死ぬかのところまで来ていて(日本寄りの機関にいるイーもそろそろ終わりを感じていたのではないかと思われます)、ふたりの焦りと飢えが生々しく表現されていて切なかった。でも一番切ないのは、やっぱり皆が自分が何をしているのか、どこへ向かっているのか、自分は何者なのか、よくわからいまま、突き動かされているのが辛かった。