スカイクロラ

最近ずいぶん短いスパンで押井作品を観ていたせいか、どれもこれも彼の世界観を執拗に持ち込んでくるところにちょっと食傷気味。それがいけないというわけではないけれど、イノセンスで完結したと思っていたので、そろそろ「新しい」世界を見せてほしいなと思った。この人がずっと描き続けているものは一貫しているが、主人公たちはそろそろもう一歩前に進んでもよいのではないか? ただ、押井監督や、アニメーションそのものに強い思い入れがなければ、また違った見え方がすると思う。

繰り返しの日常の中で孤独にあえぎながら、主人公たちはそれでも生きていこうとする。その一瞬のきらめきのほかは、すべてが誰かのゲームの中に閉じ込めれられており、キルドレや整備士たちが唐突に声を荒げる台詞さえ、台本どおりに読まれ、読み終われば終わる。人間もキルドレも風景さえも、生きながらにして、死んでいる。なぜならこれは自分たちの物語でなく、誰かの物語であるからだ。キルドレの物語は、わたしたちの社会への痛烈な皮肉にもなっている。キルドレたちが、自分の物語を取り戻すために立ち向かうのか、諦めるのか、実のところわたしにはよくわからなかった。どうして闘うって言わないのだろう?押井さんは。。共感したいのではなく、嘘でも勇気がほしいのに、とロマンティストなわたしは思う。

良くも悪くもひっそりとした作品である。必ずしも作品がよければ売れる、というわけではない。ヒットしなければ引退すると言っていたが、その辺は勘違いがあるように思う。作りたいものを作るべきだ。人間なのだから。
エンディングの綾香の歌はよかった。それから、押井作品に限って言えば、声優を使った方が作画とのバランスがよいと思う。

カウントダウン・オブ・「スカイ・クロラ」 count.2 [DVD]

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