めがね

傑作「かもめ食堂」がみずうみの中心なら、「めがね」はその中心から生まれた余波、波際である。よりゆるさを増し、波の上を漂流する木の葉のよう。唯一おお…と思ったのは、もたいまさこが自転車の上から小林聡美に向けるあの瞬間の眼光の鋭さだが、あとはひたすらゆるい。そのゆるさがちっとも嫌な感じではないのが、さすが。ただ、登場人物はテーマについて、直球で語りすぎ。たそがれよう、とか何べんも強調されるのはうっとうしいので、もっともっと寡黙でもよかったと思う。

めがね(3枚組) [DVD]