エレジー

イザベル・コイシュ監督作品/ベン・キングズレーペネロペ・クルス主演

老齢期に入った大学教授と30も年下の教え子との愛の物語。クルスは文句なく美しいのだが、設定どおり20代半ばのうちに撮るべきだったろう。この物語の初めでは、小娘でなければならないと思うのだが、クルスの雰囲気は良くも悪くも大人の色気が漂いすぎで、大人の男を演じるベン・キングズレーとのアンバランスさをさほど感じないのが、展開上ちょっと惜しいところだ。

物語は教授の目線で描かれ、最初あまりにも肉欲的過ぎてちょっと笑ってしまう。彼の友人である詩人ジョージ(デニス・ホッパー)がいい味を出しており、彼が言う『美人は姿が見えない』という台詞が印象的だ。彼女があまりに若く、あまりに美しすぎたため、彼は彼女の心を覗く勇気が持てない。彼は自分が老いていることを初めて感じ、彼女に与えられるものが少ないことに劣等感を覚える。

主人公のそれまでの生き様が、この短い時間のなかでうまく描かれている。上手く楽しく、芸術と共に生きてきたと思っていた日々が、恋に落ちた途端、音を立てて崩れてゆく。それに立ち向かうには、自分は年を取りすぎたのだ、彼は思う。

女性の立場からすれば、彼女が病を得たときになってようやく心を開くことができたのは、正直情けない話だと思う。けれど彼の弱さを責めることは誰にもできない。悲しすぎて泣いてしまったのを見て、ほっとした気持ちになった。

エレジー デラックス版 [DVD]

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